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場所による見え方の違い

場所による見え方の違い

日食の場合は月食とは異なり、観察する場所が異なると見え方が違ってきます。2012年の金環日食では場所によって、何がどのように違って見えるのでしょうか。

金環帯の内側では金環日食

月は地球表面上に楕円形のような形をした影を落とします。月の形はほぼ球形をしていますが、影が地表に対して斜めに当たると、影の形は楕円形に見えます。ところで月の本影(擬本影)は月本体の動きに合わせて移動していきます。影が通過するエリアは帯状になり、これを金環帯とよんでいます。

 

金環帯は金環食帯、金環日食帯などともよばれますが、ズバリ、このエリアの内側に入ると太陽リングが丸くつながって金環日食が見られます。後述するように金環帯の内側であっても、観察する場所が違うと、金環日食の見え方が違ってきます。逆に外側のエリアでは、太陽のリングはつながることなく、大きな部分日食で終わります。

 

例えば下の例をご覧ください。同じ長野県内であっても、金環帯にかかる諏訪市では金環日食が見られますが、金環帯から外れる上田市では、大きな部分日食となります。あなたがどこで観察するかが重要になることがおわかりいただけるでしょう。

長野県諏訪市:金環帯内側   長野県上田市:外側
金環日食が見られる   部分日食が見られる

中心線からの距離による見え方の違い

ひとことで金環日食といっても、観察する場所によって見え方が違ってきます。その違いは、金環帯の中心線からどのくらい離れているかによります。つまり、中心線に近い場所ほど金環日食となる継続時間が長くなります。また、太陽リングの形が真円に近づきます。

 

部分日食の場合も同じように、中心線へ近づくほど大きく欠けます。逆に遠ざかるほど、欠け方は小さくなります。下の例でいうと、金環帯に比較的近い熊本県熊本市では、金環日食まであと一歩です。しかし、大分県日田市、福岡県北九州市と金環帯から遠ざかるにしたがって、太陽の欠け方が浅くなっていきます。といっても同じ九州の中では、それほど大きな違いがあるわけではありません。

熊本県熊本市:金環帯近い   大分県日田市:中ほど   福岡県北九州市:遠い
金環日食まであと一歩   やや浅い欠け方   浅い目の欠け方

金環継続時間

金環日食が持続する時間は金環継続時間といいます。金環継続時間は金環帯の中で一様ではなく、中心線に近い場所ほど長くなります。リング状になった神秘的な太陽の姿を1秒でも長く見続けたいなら、中心線に近い場所へ移動するべきでしょう。

 

しかしながら、金環日食の継続時間のページで解説していますように、中心線付近では少しぐらい場所が変わっても、継続時間が大きく変わるものではありません。それよりも中心線から離れた金環帯の端の方では、少し場所が変わっただけでも継続時間が大きく変わりますから注意が必要です。

太陽リングの真円率

金環帯の中に入ると金環日食となって太陽のリングが見られます。しかし、最大食となった際に見られるリングのいびつさの度合いは、中心線付近と限界線付近では異なります。

 

まず、中心線上にある観測地の場合、太陽の輪は真円になります。中心線上から見た太陽と月は中心の位置が一致しているため、直径の異なった二つの円によって、上下左右均等の太さを持った太陽の輪が見られます。

 

しかし、観測地が中心線から外れるほど太陽と月の中心位置がずれてきます。このため太いところと細いところができた、いびつな輪になります。そして限界線上では太陽に対して月が内接し、今にも途切れそうなリングが見られます。

 

下の例では、金環帯の中心に近い千葉県市川市では均等な太陽リングですが、栃木県宇都宮市、群馬県沼田市と中心から外れるにしたがって、月の位置が太陽の端の方へ寄っていき、いびつなリングになります。

千葉県市川市:金環帯中心   栃木県宇都宮市:中ほど   群馬県沼田市:端の方
均等な太陽リング   やや片寄ったリング  

 

当サイト内の金環日食全国ガイドでは、このいびつさの度合いを真円率とし、0%から100%で数値化しています。つまり、中心線上では真円率が100%となって真円ですが、限界線上では真円率が0%となって、リングでなくなります。

リングが片寄る向き

金環日食でできた太陽のリングは、中心線から外れるほど片寄りが大きくなっていびつになりますが、片寄る方向も観測する場所によって異なります。つまり、2012年5月の日食で最大食を迎えた頃、中心線よりも北側の地域では、左上方向が太くなって右下方向が細くなります。中心線が本州の沿岸部を通る関係から、金環日食が見られる大半の地域で、このような見え方をします。

 

逆に中心線よりも南側の地域では、右下方向が太くなって左上方向が細くなります。左上が細くなる見え方をするのは、鹿児島県のトカラ列島、種子島と屋久島、伊豆半島や房総半島、三宅島など、一部の地域に限られます。

 

下の例では、金環帯の中心線よりも北側に位置する山梨県甲府市では太陽の右下が細くなります。しかし、南側に位置する千葉県館山市では太陽の左上が細くなり、見え方の違いがハッキリとわかります。

山梨県甲府市:北側49Km   千葉県館山市:南側52Km
金環日食が見られる   部分日食が見られる
2012年金環日食