2017年8月21日
アメリカを横断する皆既日食
2017年8月21日(日本時刻で8月22日)はアメリカで皆既日食が見られます。NASAとGoogleが提供する下図のように、皆既帯がアメリカの西端から東端まで広く横断します。
アメリカ本土での皆既日食は、意外にも1979年2月26日以来、実に38年ぶりのことです。それだけに現地はもちろん、日本でも多くの日食ファンが期待しています。日食ツアーに参加するなど、計画を立てられている方も多いのではないでしょうか。
日食の概要
この皆既日食はアメリカ本土のはるか西、太平洋上で月の本影が地球に接するところから始まります。本影がアメリ本土に到達するのはオレゴン州です。この頃の皆既帯の幅は99Kmと広いものではありません。
その後は東進してアイダホ州からロッキー山脈に達し、グランドティートン国立公園を横切ります。ワイオミング州のキャスパーでは2分26秒の皆既日食が見られます。その後月の本影は、アメリカ中央部の大平原地帯に入ります。ネブラスカ州のグランドアイルランドでの皆既継続時間は2分34秒です。
ミズーリ州ではカンザスシティが皆既帯の南側限界線、セントルイスが北側限界線をかすめる他、セントジョセフ、コロンビア、ジェファーソンシティなどが皆既帯に入ります。
ミシシッピー川を越えるとイリノイ州で、その後はいよいよケンタッキー州です。ケンタッキー州では食の最大を迎え、月の影の軸が地球に最も近づきます。ここでの皆既継続時間は2分40秒で、皆既帯の幅は115Kmまで広がります。
テネシー州では人口170万都市のナッシュビルが皆既帯に入り、1分58秒の皆既となります。さらに世界遺産となったグレートスモーキー山脈国立公園付近を通過してサウスカロライナ州に向かいます。サウスカロライナ州の州都コロンビアでは2分30秒の皆既日食が見られます。
その後は月の本影が大西洋へ抜けて、アメリカ横断日食は終了します。
アイダホ州ドリッグスでの見え方
日食の見え方は観測地点によってまちまちです。ここでは日本からの某日食ツアーで観測予定地であるアイダホ州ドリッグスの場合を紹介します。
シミュレーション画像は「つるちゃんの日食ソフト」を使用し、ΔT=68.4秒を入力して平均月縁で計算したものです。画像中の時刻は全て日本標準時刻で表示されていますので、日本時刻との時差に注意してください。
ドリッグスの現地時刻は山岳部標準時(MST)で、日本との時差は-15時間です。平均月縁による皆既は11時34分20秒から11時36分37秒で継続時間は2分17秒です。
ドリッグス | 現地時刻 | P | V | h |
---|---|---|---|---|
日食の始まり | 10時16分26秒 | 286.6 | 149.7 | 38.1 |
皆既日食の始まり | 11時34分20秒 | 277.1 | 129.4 | 49.9 |
食の最大 | 11時35分28秒 | 198.8 | 50.9 | 50.0 |
皆既日食の終わり | 11時36分37秒 | 119.4 | 331.3 | 50.2 |
日食の終わり | 12時59分39秒 | 110.0 | 299.5 | 57.6 |
最大食分 | 1.012 | |||
皆既継続時間 | 2分17秒 |
下の図は日食の開始、最大、終了が空のどの位置で起こるかを示したものです。概ね南東方向といえばいいでしょうか。太陽高度は最大食時点で50度ありますので申し分ありません。
次に日食の経過をみてみましょう。現地時刻で10時16分、最初は太陽の右上から欠け始めます。その後も右上が欠けた状態でどんどん食が進行します。皆既日食は11時34分20秒からの2分17秒間です。
復帰は太陽の右上から始まります。日食の前半とは逆に、後半は太陽の右下が欠けた状態になります。13時ちょうどに日食が終了して、太陽は丸い姿に戻ります。
主な都市での見え方
アメリカで主な都市での見え方です。例としてニューヨーク、サンディエゴ、マイアミ、ロサンゼルス、ニューオーリンズ、ワシントン、オクラホマシティ、ボストン(順不同)を挙げてみました。下のシミュレーション画像では軒並み食分が0.7を超えており、アメリカ全土で大きな日食が楽しめることがわかります。
ニューヨーク | 現地時刻 | P | V | h |
---|---|---|---|---|
日食の始まり | 13時23分57秒 | 279.8 | 89.3 | 60.8 |
食の最大 | 14時45分43秒 | 203.9 | 348.7 | 52.8 |
日食の終わり | 16時01分24秒 | 127.4 | 261.1 | 40.6 |
最大食分 | 0.771 |
1サロス周期後は日本で皆既日食
アメリカ横断皆既日食から1サロス周期後の日食は、2035年に日本で見られる皆既日食です。能登半島から関東にかけて富山、長野、前橋、宇都宮、水戸などの都市が皆既帯に入りますので、今から楽しみですね。