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月縁補正

月縁補正

平均月縁と補正の必要性

月縁補正の例
月縁補正の実際
提供:NASA

日食の予報では開始時刻や終了時刻を計算した結果が示されますが、皆既日食や金環日食では高い精度が要求されます。

通常は月の表面が平らであると仮定して平均月縁で計算されることが多いのですが、より正確に時刻を求めようとすると、月面の凹凸を考慮する必要があります。それというのも、深い谷があるとそこから太陽光が漏れて、皆既日食であるはずのところが実際には皆既日食でなくなってしまうからです。

また月の中心位置を計算する際、通常は質量中心を用いて計算されます。しかし、見かけ上の形状中心位置は質量中心位置からわずかにずれていますから、これも補正する必要があります。

月縁補正とは

このように、平均月縁に対して補正するのが月縁補正です。月縁補正を使った計算では平均月縁に対して観測地点から見える月の凹凸や月縁のずれを加味し、どの位置から光が漏れるかを計算します。当然、月縁補正した計算結果の方が正確ですし、皆既日食でダイヤモンドリングが現れる位置や、金環日食でベイリービーズがどのように見えるかを予測することができます。

月縁を計算する際には、これまで「ワッツの月縁データ」が用いられてきました。しかし最近では、日本の月周回衛星「かぐや」による精密な測定結果が用いられることもあります。

月縁補正の例

2009年に日本のトカラ列島で起きた皆既日食の例を見てみましょう。平均月縁による計算の場合、日本で見られる皆既日食の最長は悪石島の6分20秒で、2番目が諏訪之瀬島の6分18秒です。このため悪石島は皆既継続時間が最長だと騒がれました。しかし月縁補正を行った計算では悪石島は6分17秒で、諏訪之瀬島は6分18秒となります。悪石島では第3接触時に深い谷間から光が漏れるため、実際には諏訪之瀬島の方が継続時間が1秒間だけ長くなるのです。

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