金環日食の撮影
めったに見ることのできない金環日食を、失敗なく撮影するにはどうすればよいでしょうか。
金環日食は部分日食と同じ
金環日食になるとまわりが薄暗くなってきて、気温も低下してきます。動物も夕方になったと勘違いして、行動に変化が現れることもあります。そういう意味では金環日食によって、太陽の光量が大きく減少しているのは間違いありません。
しかし写真撮影する立場から言うと、金環日食は普通の部分日食と同じです。リングの部分から強烈な太陽光が、少なからず地表に降り注いでいるからです。そのような意味から、金環日食の撮影方法は、部分日食の撮影方法とほとんど同じといえます。部分日食の撮影もあわせてご覧ください。
基本はNDフィルターをつける
金環日食中の太陽光は予想以上に強烈ですから、NDフィルターをつけたままにしておくのが基本です。皆既に限りなく近い金環日食では、フィルターを外した方が良い場合もありますが、ケースとしては少ないでしょう。フィルターを外して撮影する場合は目をやられないように最新の注意を払う必要があります。
二つの露出時間
黒点重視の場合
被写体は太陽ですから、太陽の黒点をハッキリ写したい。そう思われる場合は日食での露出時間で説明している表を参考にするのがよいでしょう。
しかしこの露出時間で撮影すると、太陽の輪郭は少し頼りない感じで写り、クッキリ感がありません。これは太陽の周辺減光とよばれる現象のためです。太陽の周辺部は太陽の中央部に比べて少し暗くなっており、周辺部が露出不足になってしまうからです。
太陽の輪郭重視の場合
いよいよ金環が近づいて先のとがった円弧を持つ太陽や、金環日食中の細い太陽リングをシャープな輪郭で写したいと考えるのは当然でしょう。このように輪郭を重視して撮影したい場合は、黒点を重視する場合よりも、4倍ほど露出を長くすると良い結果が得られます。
ベイリービーズの撮影
2002年金環日食の第2接触時に |
連続撮影したベイリービーズ |
撮影者:草野敬紀さん |
撮影日:2002年6月11日 |
場所:テニアン島 |
二次利用不可 |
NDフィルターを装着
ベイリービーズの際も金環日食中と同様に、NDフィルターは取り付けたままにしておきます。このことは望遠レンズで撮影する場合も、天体望遠鏡を使って拡大撮影する場合も同じです。
短い間隔で撮影
三日月形をした太陽の円弧の先が少しずつ伸びていき、2本ある円弧の先が伸びきると、太陽の環がとぎれとぎれにつながります。いわゆるベイリービーズです。この時の変化は非常に速いもので、数秒の間に見え方が大きく変化します。
右の写真は2002年テニアン島で見られた金環日食で第2接触頃の連続写真です。たった12秒の間に見え方が大きく違っていることがおわかりいただけるでしょう。それだけに、1秒から5秒くらいの間隔でシャッターを切り、チャンスを逃さないように撮り続ける必要があります。
シャッタースピード
ベイリービーズの場合、先に出てきた輪郭重視の露出よりもさらに露出時間を増やした方が、ベイリービーズが引き立つ画像を得ることができます。右の画像では彩層やプロミネンスまで写っています。
しかしシャッタースピードを長くすると、他の部分は露出オーバー気味になってしまいます。2012年に日本で見られる金環日食では食分がやや小さく、太陽リングが太い目です。ベイリービーズに露出時間をあわせると、太陽本体は露出オーバーが顕著に現れるでしょう。それだけに、何をターゲットに撮影したいのかをはっきりさせておくべきです。
オートブラケッティングを使う
ビーズとなる光源の明るさはまちまちです。ですから露出時間を多段的に変えて撮影しておいた方がよいでしょう。カメラが自動的に露出を段階的に変えながら撮影してくれるオートブラケッティング機能を積極的に使いましょう。
限界線付近で撮影
一般にベイリービーズは、金環帯の中心線よりも限界線に近い場所の方が長く続きます。ベイリービーズ狙いで撮影される場合は、観測地を一考されるとよいでしょう。
肉眼での直視は禁止
金環日食中の太陽光はごくわずかだと思われるかもしれませんが、それは大きな間違いです。美しさに見とれて肉眼で直接目視するのは失明の恐れがありますから、絶対に行わないようにしてください。
NDフィルターごしに観察するのも同様です。構図決めする程度なら問題ありませんが、長く見続けるのは目を痛めてしまう原因になります。