NDフィルター
金環日食や部分日食の撮影では、太陽のまぶしい光が一部届いていることから、太陽光を減光する必要があります。これを適切に行ってくれるのがNDフィルターです。
まぶしい太陽
NDフィルター |
撮影者:つるちゃん |
二次利用可 |
NDフィルターを取り付けたカメラ |
撮影者:つるちゃん |
二次利用可 |
太陽の光は強烈です。カメラの絞りを目いっぱい絞ってISO感度を最小にし、シャッタースピードを最速にして撮影しても、太陽は完全に露出オーバーになってしまいます。よって何らかの方法で、太陽光を減光する必要があります。写真撮影の場合、赤、黄、青など、全ての波長の光を均一に減光しなければなりません。さもないと太陽が赤みがかったり、青みがかったりして写ってしまいます。この悩みにこたえてくれるのがNDフィルター(Neutral Density Filter)です。
NDフィルター
NDフィルターとは、太陽の光を全ての波長にわたって、一定の割合で減らしてくれるフィルターのことです。これを使うことで、カメラによる日食撮影が可能になります。
NDフィルターにはいくつかの種類があります。最も一般的なのはカメラのレンズ先端にねじ込むタイプです。円形の金属枠にガラス製のフィルターがおさめられていますから、ねじ込むだけで取り付けられます。ただ、ワンタッチで脱着というわけにはいきません。
また右上写真のように、ガラスに薄膜を蒸着したタイプもあります。レンズの前面へ取り付けるための専用取り付けホルダーが必要になります。脱着が容易であるのが特徴で、部分日食からコロナ撮影に切り替える時などに有効です。
他には薄いシート状のものもあります。これらはゼラチンやアセテートでできています。薄いので像の劣化が少ないのが特徴ですが、傷がつきやすいのがデメリットです。取り付けには専用のフィルターフォルダーが必要です。
フィルターに書かれた数字の意味
NDフィルターには数字が書かれています。この数値は整数の場合と少数点がつく場合の2種類あります。このうち整数のものについては、光量が数字分の1になることを意味します。例えば ND400 と書かれていれば、光量が400分の1になります。
また少数がつく場合は、10の累乗分の1を意味します。例えば ND2.0 は10の2.0乗分の1ですから、光量は100分の1になります。ND4.0はD4と略されることもあります。
以上を下の表にまとめておきましたので参考にしてください。ただし、実際に販売されていないものも含まれていますのでご注意ください。
富士フィルム (シート状) |
ケンコー (ガラス製) |
露出倍数 |
---|---|---|
ND 0.1 | − | 1.25 |
ND 0.2 | − | 1.5 |
ND 0.3 | ND2 | 2 |
ND 0.4 | − | 2.5 |
ND 0.5 | − | 3 |
ND 0.6 | ND4 | 4 |
ND 0.7 | − | 5 |
ND 0.8 | − | 6 |
ND 0.9 | ND8 | 8 |
ND 1.0 | − | 10 |
ND 1.2 | ND16 | 16 |
ND 1.5 | − | 32 |
ND 1.8 | − | 64 |
ND 2.0 | − | 100 |
ND 2.6 | ND400 | 400 |
ND 3.0 | − | 1000 |
ND 4.0 | − | 10000 |
ND 5.0 | − | 100000 |
ガラス製フィルターを重ねて使用
NDフィルターは重ねて使用することができます。例えばガラス製のND400とND8を2枚重ねると、400分の1 と 8分の1 を掛け算した効果があり、3200分の1に光量を減らすことができます。しかしこれでも結構明るくて、ファインダーを通した太陽はまぶしく感じます。それならば、さらにフィルターを重ねればよいと思われるかもしれませんが、重ね合わせるほど像が悪化してきますから、あまりおすすめできません。
シート状フィルターの場合
シート状フイルターの場合は露出倍数が豊富にあります。1万倍のND4.0か、10万倍のND5.0を使用するのが良いでしょう。これだと1枚だけで十分に減光することができます。
太陽観察用として使わないこと
NDフィルターはもともと撮影用に設計されたものです。可視光線や紫外線は少なくなりますが、赤外線を通してしまいますから目に有害です。構図決めやピント合わせのために使用する程度なら問題ありませんが、日食の眼視観察用としては使用しないでください。
NDフィルターを購入
以降にでてくる画像をクリックすることにより、主に日食撮影で使用するNDフィルターを購入することができます。(YAHOO!ショッピングを開きます。)
ケンコー製の角型NDフィルター
ケンコー製の角型ND10000フィルターを使用することで、日食撮影時に太陽光を1万分の1に減光することができます。フィルターの他にカメラへ取り付けるためのアダプターリングとマルチホルダーの合計3点が必要です。取り付ける順番は、[カメラのレンズ]−[アダプターリング]−[マルチホルダー]−[角型NDフィルター]となります。
NDフィルターのサイズは76mm用と100mm用の2種類あり、レンズ径に合わせて選んでください。アダプターリングはレンズ径とマルチホルダーの種類に合わせて選びます。
マルミ光機製のネジ込み式フィルター
マルミ光機製のND5.0(D5)フィルターで、使用すると10万分の1に減光することができます。日食中の太陽を撮影するためにガラス基盤に蒸着が施されています。ネジ込み式なので取り扱いやすいですが、フィルター径は58mmと77mmです。それ以外のレンズ径の場合は、ステップアップリングかステップダウンリングも購入する必要があります。
マルミ製太陽撮影用フィルター DHG ND-100000 商品説明
シュミットNDフィルター
望遠鏡販売店のシュミット扱いのND5.0(D5)フィルターです。使用すると10万分の1に減光することができます。あくまでも撮影用ですので、眼視観測用には使用できません。フィルター径は52mm、58mm、62mm、72mm、77mmがあり、ラインナップが豊富です。
富士フィルム製のシート状薄膜フィルター
富士フィルム製のND4.0(D4)フィルターを使用することで、日食中の太陽光を1万分の1に減光することができます。TAC(トリアセテート)をベースに直接、色素を混入したタイプで、ゼラチンフィルターとは異なるシートタイプです。TACベースは水・湿気・熱に強く、長期間平面性を維持する特性を持っています。自由な大きさにカットして使用します。
アストロソーラー太陽黒点観測フィルター
AstroSolar セーフティーフィルムは、1枚のシート状となっており、このシートをあなた自身が作るセルに納めるだけで高品位な太陽観測が可能となります。ND5.0規格の「眼視観望用」及び太陽光をより透過させるND3.8規格の「太陽撮影専用(眼視使用不可)」があります。
アストロソーラー太陽黒点観測フィルター 商品説明(国際光器)
太陽黒点観測用金属メッキガラスフィルター(天体望遠鏡用)
このフィルターはもともと日食観察や日食撮影用ではなく、太陽黒点観測用の製品です。天体望遠鏡の対物側へ取り付けます。ガラス板に太陽光を10万分の1まで抑える特殊な「ソーラープラスII」という太陽観測専用金属膜のメッキが施されています。このフィルターを通した太陽像はオレンジ色となり、黒点がくっきりと見えます。