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コロナの撮影

コロナの撮影

皆既日食の撮影といえばコロナを外すことはできません。ここではコロナを撮影するにあたってのポイントを説明します。

広がりを持つコロナ

コロナの明るさは太陽に近いほど明るく、太陽から離れるにしたがって暗く淡くなっていきます。地上から見たコロナは太陽直径の2倍くらいまで明るく広がって見えます。しかし実際には太陽直径の4倍くらいまで広がっています。さらにその先にも広がっていますが、空の散乱光に埋没していきます。

シャッタースピード

コロナの撮影ではシャター速度を大きくはずさない限り、それなりに写ってくれます。しかしながら内部コロナと外部コロナでは明暗差が非常に大きくなっています。このため外部コロナまで写そうとすると、内部コロナが露出オーバーで白トビになってしまいます。逆に内部コロナをきれいに写そうとすると、外部コロナは写ってくれません。ですからお気に入りの写真を得るためには、露出時間を千分の1秒から数秒まで、何枚も写しておくのが良いでしょう。カメラが自動的に露出時間を変えながら撮影してくれる、オートブラケッティング機能を使うのも効果的です。

短い露出時間   中くらいの露出時間   長い露出時間
短い露出によるコロナの写真   中くらいの露出によるコロナの写真   長い露出によるコロナの写真
撮影者:大越治さん   撮影者:大越治さん   撮影者:大越治さん
撮影日:2009年7月22日   撮影日:2009年7月22日   撮影日:2009年7月22日
露出:1/1000秒   露出:1/250秒   露出:1/60秒
場所:北硫黄島近海   場所:北硫黄島近海   場所:北硫黄島近海
二次利用不可   二次利用不可   二次利用不可

コンポジットによる流線コロナ

2009年皆既日食の流線コロナ
流線状のコロナが写しだされた写真
撮影者:大越治さん
撮影日:2009年7月22日
場所:北硫黄島近海
二次利用不可

右の写真をご覧ください。見事なコロナの流線模様が写し出されていますが、これを単一の写真から得るのは難しいことです。

 

上級者の方はコンポジットという手法を用います。これは、露出時間を変えながら撮影した複数の画像を丁寧に重ね合わせるというものです。技術と根気がいる作業の結果、このような美しい画像を得ることができるのです。右の写真では7枚の画像がコンポジットされています。

レンズの焦点距離

通常のコロナ撮影

単にコロナを写すだけなら標準レンズでも写すことができます。しかしコロナをはっきりと写しだすためには、ある程度の焦点距離を持った望遠レンズが必要です。

外部コロナまで写すことをターゲットにし、写角とのバランスのことも考えると、35mm判フィルム換算で500mmから600mmの焦点距離が、最も見栄えがすると言われています。これはASP-Cサイズのデジタルカメラに換算すると、300mmから400mmに相当します。また、フォーサーズ規格の場合は250mmから300mmとなります。

アップで狙う場合

太陽に近い部分のコロナをアップで狙う場合は、1000mmとか2000mmといった超望遠レンズが必要になります。実際には天体望遠鏡にカメラのボディを取り付けて撮影するスタイルが一般的です。

広がったコロナを撮影

逆にもっと広がったコロナを写したい場合は、焦点距離の短いレンズを使用することになります。しかし本当に希薄な部分のコロナまで写そうとすると、特殊なフィルターを使うなどして大気の散乱光を抑える工夫が必要で、難易度が高くなります。

レンズの焦点距離と写り方

NASAより提供される模式図を下に載せておきましたので参考にしてください。図の中に出てくる Filmは35mm判フィルム換算で、DigitalはASP-Cサイズのデジタルカメラ換算となっています。

 

レンズの焦点距離とコロナの写り方
レンズの焦点距離とコロナが写る大きさの違い
提供:NASA

欲張らないこと

皆既日食ではコロナ以外にも撮影対象がたくさんあります。アレコレいろいろと撮影したくなりますが、あまり欲張らない方がよいでしょう。

 

皆既日食が始まると、ベテランの方でも興奮状態に陥ります。ましてや初めての方ならなおさらでしょう。しかも皆既日食はごく短時間で終わってしまいます。焦りと興奮が入り乱れる中、確実に機材を操作して撮影し続けるのは、ベテランといえども容易なことではありません。機材の操作に追われて皆既日食そのものをよく見ていなかったとか、独特の雰囲気をじっくり味わえなかった、なんていうことにもなりかねません。本当に自分が撮影したいものは何かをよく考えて、ポイントを絞って撮影にのぞみましょう。

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